最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)977号 判決 1959年5月29日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人後藤陸朗の上告理由について。
支払のためにする手形の呈示義務の免除は、たといそれが手形自体に記載されることなく、口頭でなされたものであつても、なお、免除者とその相手方との間においては、その効力を有すると解すべきである。本件において、原審が証拠により確定した事実は、本件手形の裏書人である上告人は、振出人から、銀行に預金がないので呈示しないよう依頼されたので、手形所持人である被上告人にその事情を告げ、本件手形の呈示義務を免除したというのであつて、右事実によれば、被上告人は本件手形を呈示しなくても、呈示したと同一の効果をうけ、上告人に対し償還請求をなしうるものといわなければならない。所論は、原判示を誤解し、又は原審の裁量に属する事実の認定ないし証拠の取捨を争うものであつて、採るをえない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)